大統領に就任したら、意外とマトモになるのではないかと思われていたドナルド・トランプは相変わらずだ。そこで、トランプ周辺で、唯一リベラルとされる長女イヴァンカ・トランプとその夫のジャレッド・クシュナーに対する注目が集まっている。

 異例の政策ばかり推し進めるトランプ政権で、唯一「話せる」のが、イヴァンカとジャレッドとされるからだ。

 

 トランプが当選した後には、『リーン・イン』という世界的なベストセラーで知られれるFacebookの女性役員シェリル・サンドラバーグも、イヴァンカに近づこうとした。

 さらに、世界的な映画スターであるレオナルド・ディカプリオも、イヴァンカに面会した一人だ。環境問題に取り組んでいる彼は、「地球温暖化なんて嘘だ」というトランプの主張を危惧している。地球温暖化について、イヴァンカに説明して、父トランプに取りなしてもらおうとしたのだ。

 

 トランプは安倍首相を厚遇しているといわれるが、そこにもイヴァンカの影響があるとの報道まである。トランプが大統領となる前にトランプタワーで安倍首相を面会したことは、記憶に新しい。そのときに、イヴァンカも立ち会っていた。そして、安倍首相を気に入ったというのである。

 今回は、イヴァンカ・トランプとその夫のジャレッド・クシュナーについて見ていこう。

 

1.ジャレッド・クシュナーとは?

 

 イヴァンカの夫のジャレッド・クシュナー(35歳)は、ニューヨーク州の隣のニュージャージー州で、トランプ家と張るほどの勢いがある不動産王クシュナー家の跡取り息子である。

 トランプの選挙戦で見せた活躍から、頭がいい人ではあろうが、さほど勉強熱心ではなかったらしい。

 

 2003年にハーバード大学を卒業し、2007年にニューヨーク大学のロースクールを卒業している。ハーバード大学はいわずもがなだし、ニューヨーク大学のロースクールも全米6位といわれるトップ校のひとつである。

 もっとも、クシュナーが合格したのは、彼の父が、ハーバードに2.5億程度、ニューヨーク大学のロースクールに3億程度の大口の寄付をしたからで、通常ならば、とても入学できる成績ではなかったとの話もある。

 もっとも、これは「裏口」でもなんでもなく、アメリカの大学には「大口献金者枠」があるらしい。

 

 卒業後は、親のやっている不動産事業のほか、ニューヨーク・オブザーバーというメディアを買収した。その後、メディアに関する知識を役立てて、トランプ勝利の立役者となったことは、よく報道されているとおりである。

 

2.クシュナーは民主党

 

 意外に思われるかもしれないが、クシュナー家は代々熱狂的な民主党支持で知られる。

 父親は民主党への大口献金者だし、ジャレッド自体も民主党支持だった。

 共和党陣営を指揮してトランプ勝利に貢献したジャレッドだが、彼の家族は「トランプ嫌い」なのではないかといわれる。

 ジャレッドの弟のジョシュアは、選挙期間中に、突然、トランプを批判するツイートに「いいね」を何度もするという無言の抗議をしたことがある。ジョシュアの彼女はスーパーモデルのカーリー・クロスで二人は4年間付き合っている。知性派でもあるクロスは、強烈なトランプ批判で知られる。

 

 もともと、LGBTの権利を擁護するなどリベラルで知られたジャレッドだから、突然の心変わりは、妻であるイヴァンカへの愛ゆえか、義父トランプへの忠誠心か、これを機会に権力を手にしようという野心なのか、それとも、これらを全部持っているのだろうか。

 

 2017年1月、上級顧問としてトランプの政権に加わることが発表された。親族が政権に加わるのは異例である。政権のなかでの影響力が大きいといわれるクシュナーだが、相次いで出されるトランプの大統領令に、政権内の「リベラル」の対応が問われる。

 

写真はホワイトハウス。

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