少子化について、個人的に思っていることが二つある。今日、この機会に書いてみたいと思う。

  少子化対策を前面に出す国は、少子化

  保守的な国は、少子化

 

1.         少子化対策を前面に出す国は、少子化

 

日本は希望出生率1.8を掲げているが、少子化を食い止めたいならば、出生率の話を止めたほうがいいのではないかと思う。鶏・卵という議論があるのは確かだが、出生率を政策目標に掲げる国、出生率の話が大好きな国は、往々にして出生率が低い。

世界の国を出生率の低い国から順番に見ていこう。日本(1.43)よりも低い国は13か国あるが、名誉ある下から5位までは次の各国である。(CIA, Factbook2015年))

 

韓国

1.25

香港

1.18

台湾

1.12

マカオ

0.94

シンガポール

0.81

 

香港、台湾、マカオと国と呼ぶべきが疑義がある地域が並んでいることはさておき、私の知る限り、これらの国は押しなべて出生率の話が大好きである。女性のリプロダクティブ(生殖)の国際比較といった内容の論文を書くとき、韓国と台湾の研究者は、すべからく出生率の話から始める。こんなに国全体としての出生率が低くなった昨今だからこそ、女性一人一人の生む環境を整えるのが大事という議論であるまあ、日本でもおなじみの議論である。。シンガポールについては、日本と同様に希望出生率を政策に掲げているらしい。

これだけ聞くと、すぐに反論されるだろう。いやいや、出生率が低いからこそ、それに悩みもし、なんとか上げようと思い、政策目標に掲げるのだと。確かに、それはうなずける話である。ところが、話はそこでは終わらない。他にも日本と同程度に出生率が1.5を切る国は、ヨーロッパを中心に多くあるけれど、出生率の回復を政策目標として掲げる国はほとんどないとのことなのである。多くの国においては、少子化対策ではなく、児童・家族政策の一環として育児支援がなされているようなのである。

たとえば、1990年代に出生率が下がったものの持ち直したのはアメリカ、スウェーデンである。アメリカでは、出生率を政策目標に掲げずに、女性の「リプロダクティブ・ライツ」、つまり、産むのも、産まないと女性の自己決定権という発想から議論を始める。

児童・家族政策というのは、一人一人の子どもたちがどうやって育っていくか、一つ一つの家族をどうやって援助していくかという話である。つまり、国に対して個人が援助を求める権利という発想なのである。それに対して、出生率というのは、国の力を維持していくために、未来を担う子供たちが必要だ、だから、女性たちよ、社会進出も大事だが産むことを忘れてはならないという理論のように見える。つまり、子どもを産むということが、個人の国に対する義務のように響くのである。私自身は中国語が読めないので確かめたことがないが、中国の憲法には、子どもの生むのが女性の国に対する義務だと明記されているらしい。それでも、中国の女性たちは、一人っ子政策で規制しない限り、産み続けたのかもしれない。しかし、日本の私たちは、そうではないのではないか。少なくとも、私個人は、「国のために産め」なんて言われても興ざめである。少子化が大変なんです、お国のために産んでくださいというスローガンに、実際にどれほどの女性が心動かされて、子どもを産もうと思うのか。はなはだ疑問と言わざるを得ない。

出生率を政策目標に掲げる国、少子化対策を前面に押し出す国、こういう国では「国のために産め」と言われているようで、出生率が伸びないのではないか。私はそう思うのである。

 

2.                         保守的な国は、少子化

 

保守的な国では出生率が低い。これもまた、ある一定の事実ではないか気がする。

先進国の中でほぼ唯一、出生率2.0以上を誇るフランス(同CIAデータ)。このフランスは、児童・家族政策を行う国のお手本のように言われており、子どもを産めば産むほど負担が低くなる税制や社会福祉などが、その理由として挙げられるが、社会の寛容さについても、同じように指摘されているところである。なんでも、フランスでは、事実婚、一人親家庭など、いろいろな家族に対して寛容な風土があり、それが子どもを産み、育てやすい社会につながっているということである。

給与補償で休める産休なんて0日、公的な保育園制度は惨憺たる状況、そんな育児の理想を逆にいくアメリカでも、出生率は1.87で、日本の目標値よりも高い(同CIAデータ)。この国も、養子やシングルマザーなど、様々な形の家族へのスティグマ(偏見)が、保守的な東アジアやカトリックの国に比べて、少ないように感じられる。そういうと、アメリカの高い出生率は、絶え間なく流入してくる移民たちが支えているんでしょという話になる。確かにそういう側面はある。ヒスパニックは2.19で高いが、ヒスパニックでない白人だって1.76で低くはないとされている(2012年)。

対して、スペイン(1.49)やイタリア(1.43)は、厳かにカソリックを信仰し、女性の伝統的な役割を重んじ、非嫡出子なんてとんでもないというお国柄。こういう保守的な価値観が変わらないまま、急激に女性の社会進出が進んだため、社会が対応できずに、少子化が進んだという話もあるのである。

もちろん、私個人は決して事実婚や一人親を奨励するわけではもちろんない。ただ単純に、「少子化」という観点だけに限って言えば、多様な家族に対して寛容な国ほど出生率は高いのではないかという気がするのである。

もちろん、上記は単なる私の個人的なguess。なんら根拠のある実証のある論理ではない。うーん、なんとなくそんな気がする。ほんとのところはどうなのだろう。誰か確かめてくれないかな~。


ブログ160920

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