アイオワの党大会の結果が見えてきた。共和党はテッド・クルーズがドナルド・トランプに勝利。まれに見る接戦で判定不能と言われた民主党も、真夜中近くにどうやらヒラリー・クリントンに分があるらしいということが分かり、ヒラリーがにこやかに勝利を宣言した。
まずは、民主党から。勝利宣言をするヒラリーだが、「彼女は決して勝ったとはいえない」というのが、ニューヨーク・タイムズを含むアメリカ全体の評価ではなかろうかと思う。万全の知名度を誇り、他に有力候補者もいないことから、大本命とされていたにもかかわらず、この初戦の結果は彼女にとっては不本意だろう。死に票を嫌うアメリカ人たちも、バーニー・サンダースが勝つ可能性があるとわかれば、むしろそちら側にシフトする可能性がある。少なくともアメリカの若者は、8年前のオバマの時と同じような熱狂を、ヒラリーに対して持ちえないことは確実に明らかになったわけである。
バーニー・サンダースは74歳。 決してカリスマ的な指導者ではない。しかし、徹底的に誠実なイメージがある。メール問題というヒラリーの弱点を攻撃することもできたのに、サンダースはこの論争に加わることを拒んできた。アイオワの選挙前には、若者たちに向けて「投票率が勝負だ。君たちがこの国の行方に関心を持たなくなれば、この選挙に勝つことはできない。どうか投票に行ってほしい」と呼びかけていた。若者に支持されているバーニー・サンダースにとっては、若者の得票率が高くなることが勝利につながり、無関心は敗北につながるというわけである。そういう意味では、日本の選挙とも似ていて興味深い。
次に共和党。ドナルド・トランプを抑えてテッド・クルーズの勝利。彼は、プリンストンとハーバード・ロースクールを卒業したエリートである。それだけではない。ハーバード卒業時は成績上位10%の者だけに送られるマグナ・カム・ラタを取り、ハーバード・ローレビューの編集長をしている。エリート中のエリートなのである。加えて容姿にも恵まれた彼は、共和党の若きスターだった。民主党支持者であっても、「共和党の中ではまとも」と言っていたインテリの彼であったが、他の候補者と差別化して最も保守的な層の支持を取り込むためか、その主張は次第に右に寄りつつあると評価されている。もともと熱心なクリスチャンだけあって、家族問題に関しては相当に保守的で、 中絶は原則として認めない方針だし(母体に危険が及ぶときのみOK)、同性婚にも反対している。
最近では上院議員時代にゴールドマンサックスから借りた500,000ドルのローンについて公表していなかったことをたたかれて失速しており(彼の妻はゴールドマンサックスのバイス・プレジデントなのである!!!)、このアイオワで負ければレースから競り落とされる可能性もあったが、ここに来て共和党の中では最有力の候補となった。
次の大統領選は、現在のアメリカを良しとするかしないかを問われているともいえよう。オバマは、明らかにバーニー・サンダースよりも、ヒラリー・クリントンびいきである。つまり、ヒラリー・クリントンが大統領になればオバマの路線が基本的に継続される。8年間続いたオバマ路線を必ずしも良しとしないアメリカ国民は、よりリベラルな路線(バーニー・サンダース)か、より保守的な路線(共和党候補者)かを、問われているのではないだろうか。
次はニューハンプシャーでの党大会。アイオワ、ニューハンプシャーは、長い選挙戦を占う重要な試金石となるので注目である。
(写真はいずれもニューヨーク・タイムズから。)