はじめて海外に住んでみて、カルチャーショックに落ち込むことも多いです。そして、「なんか全然違う!」とショックを受けることは、日本の文化を再確認する機会にもなると感じてます。
ということで、今回は、文化を計る6つの要素について。
これは、Harvard Business Reviewの「Global Dexterity」という本の中で、Andy Molinskyという著者が紹介しています。コミュニケーションスタイルに特化してはいますが、「確かになるほど」と思う要素が多い!
Directness:
言いたいことをどれだけ直接的に表現するかという物差し。
たとえば、日本の場合には、子供のお友達がお家に遊びに来ていて、夕食の時間になってもなかなか帰らない時なんかには、「お夕飯、食べてく?」と母親が尋ねに来たりする。そういう経験、ありません?
こういうとき、場合によりますが、「ありがとうございます!今日のメニューはなんですか?」って聞くよりも、「ああ、もうそんな時間なんですね。失礼させていただきますね。今日はありがとうございました」っていう答えが期待されていることもある。
これは間接的なコミュニケーションの例です。日本の場合には、こういう間接的なコミュニケーションや、文脈を読む、行間を読むことが期待されていることが多い。それに対して、アメリカの場合には、直接的な表現で、言った通りの意味しかないことが多い。こちらに来て、つくづくそれを実感しています。
Enthusiasm:
どれだけ感情豊かに表現するかという物差し。
たとえば、アメリカの授業では、学生が教授に質問をした場合、
教授は情感たっぷりに「Excellent question!!!」と絶賛します。そして、次の瞬間に、「But the answer is No…」と。
はじめはすごいびっくりしました!なんで、すごいいい質問なのに、答えが「No」なの???
そのうち、どの質問に対しても、教授は「Excellent!」と絶賛していることに気づきました。
「Excellent!」「Perfect!」「Great!」これらは日本語でいうところの、「そうですね」くらいの感覚なのではないのかとさえ。。。アメリカのコミュニケーションは、日本に比べてテンションかなり高めです。
Formality:
どれだけ尊敬を言葉に表すかという物差し。
もちろん、アメリカにも丁寧な表現というのはありますが、「敬語」という決まったスタイルがあるわけではなくて、非常にフラットだなと感じます。ファーストネームで呼び合う習慣もそうだと思うし、教授の中にも学生からファーストネームで呼ばれることを好む人も多い。授業中でも、「もうちょっと声を大きくしてもらえますか?」と、学生が教授に言うのは全然ふつう。ついでにマイクの位置についても指図しちゃう。
それと比べると、日本の場合には、コミュニケーションスタイルは比較的フォーマルだなと思います。
Assertiveness:
どれだけ自信を持って自分の意見を表明するかという物差し。
Directnessとちょっと重なるのですが、たとえば、こういう場面を考えてみてください。自分の上司が会議の場である提案をしていて、自分としてはその提案がちょっとイケてないなって思うとき(たとえば、スケジュール的に無理があるとか)…
日本的な感覚からすると、とりあえずは発言を控えておいて、上司に意見を求められたらはじめて、
「いいと思います。スケジュールの点については、再度、確認するのが無難かもしれません。」と答えたりしますよね。
まさか、そこで、「はいはいはい!!!」って手を挙げて、「ご提案については、スケジュール的に相当な無理があるのではないかと懸念します」って言ったりしない。
日本においては控えめであることが良しとされることが多いです。「ヒエラルキー」的な構造が、比較的はっきりした社会なので、自分より上位のものに対しては控えめであることが求められることも多い。それに対して、「私はこう思います!」と自信たっぷりに指摘することが、アメリカでは良しとされることが多い。 自分の存在を可能な限りアピールすることが求められている。社会構造が、比較的「フラット」で、だからこそ、階級に関係なく存在をアピールした人が、頭一歩抜けることができる。こういう構造的な要因も、コミュニケーションスタイルに影響しているかもしれません。
Self-Promotion:
自分自身をどれだけ積極的に表現するかという物差し。
日本人なら誰でも分かると思いますが、自分のことを褒めるのは、私たちにとってはなかなか抵抗がある。しかし、アメリカでは「エレベータ・スピーチ」「エレベータ・ピッチ」などと呼ばれますが、エレベータに乗っている短い時間にあった人をつかまえて自分をアピールすることが、チャンスを得るためにとても重要。
東京大学のゼミに応募するときに、「末席を汚させていただきたい」みたいな表現をした私は、こちらの学生がゼミに応募するときに、「自分こそはbest fitだ」と表現するので、驚いています!
Personal Disclosure:
自分自身の個人的な情報をどれだけ開示するかという物差し。
これはかなり人によるとも思いますが、アメリカの場合には「Small Talk」と言って、会議の合間に弁護士とクライアントが話す。授業の合間に教授と学生が話す。レジに並ぶ他人同士が話す。こういうことが日常しばしば。そういうときのネタは、自分の家族だったり、出身地だったり、趣味だったり、なにかとパーソナルな情報を含むもの。そういう意味では、個人的なことを人に明かすのに 抵抗が低い文化といえるのではないかと思います。
文化というと「国」単位を基準に考えてしまうことが多いのですが、「地域」「業界」「個人」というのも、実は大きな要素だと思います。日本でも関東圏と関西 圏で文化が異なったり、成熟した製造業とスタートアップのネットベンチャーで文化が異なったり、また、個人の性格が異なったり。
上記の6つの基準は、個人の性格を分析する上でも、応用できるツールなので、ぜひ、自分自身のコミュニケーションスタイルの分析に、ぜひお使いください。
写真は、Direct(そのまんま、国旗!)でAssertive(存在感たっぷり!)なアメリカのケーキ。なんかこちらの文化を象徴している気がしてなりません。